尾形アツシ個展「日常の外れ」に寄せて。

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尾形アツシ個展大阪

 尾形アツシ展「日常の外れ」本日4日目となります。2日目には尾形さんが在廊下さり、小さな店内ゆえかお越しくださいました皆様と近い距離でお話し頂いている姿が、とても良い雰囲気でした。今回の個展はQuwan初となる個展です。どんなストーリーを皆様にうつわから感じ取って頂きたいかを、尾形さんのうつわと向き合いゆっくりと考えた幾つかのポイントをここでまとめておきます。


 はじめにフォーカスしたのは尾形さんの土や釉薬等の素材との向き合い方について。手で作るという事を一つずつ確かめるかのような形と、土その物を連想させるようなテクスチャー。綻びやヒビもそのうつわの味として魅せるスタイルに行きついた背景にはなにがあるのか。
 そして2つ目には歩んでこられた道のり。東京で編集のお仕事をされた後の陶芸家への転身と編集者としての視点。陶芸一筋の人生を送ってこられた方の話をしたときの「あの人はうまいからね」と仰った時の表情に、どんな思いがあるのかも気になったところです。
 3つ目に陶芸その物が持つ不確実性。うつわを焼くという行為は性質までも変化させ、ある種自身のコントロールから外す行いです。薪窯焼成ともなると様々なイレギュラーが重なりよりその性質は濃くなります。
 最後に東京での大規模な個展で感じられた日常使いのうつわを取り巻く神秘的な世界観。オブジェともいえる大壺を、普段使いのうつわを作る土で制作する事にこだわった尾形さんの思いと、その対比の中で引き上げられた普段使いのうつわの魅力がどういったものかという事です。まずはこれら4つの大枠が浮かび上がり、まとめるとこんな感じです。

・素材に対しての向き合い方、綻びに惹かれるその背景。
・編集者から陶芸家への道程、その歩みの中で感じられただろう様々な思い。
・陶芸が持つ不確実性。
・東京での個展を終えた後の尾形さんの普段使いのうつわの新たな魅力。

 このような幾つかのポイントを何度も反芻しながら、尾形さんうつわの魅力の背景を自分の中で落とし込んでいきました。そうしていくうちに浮かび上がった一つの言葉が“外れ”というキーワードです。この“外れ”という言葉が持つイメージがとても尾形さんの今のうつわを表現するのにとてもあっていると考えました。

 土という素材に身をまかせ、綻びなどを味として表現する作風は、尾形さん自身と陶芸をまるで編集したようでもあります。陶工の道を歩んでいない作家の技。素材に身をゆだね、陶芸の持つ不確実性の中で生み出されるうつわは整うことを拒否しているかのようでもあります。そうして生まれる形は余計な物事に縛られる事のないとても自由で闊達とした形です。縛られることのない作風は、突き詰めるほどに道具としての側面が薄れていくようであり、素材その物の意識が芽生え日常から外れていきます。ここでの“外れ”は外見というよりも、うつわの制作過程により内に芽生える性質の様な物であり、人の世の道具が自然に戻っていくような感覚です。

 その意識が一層強く芽生え、また違った文脈で強化されていたのが東京での大規模な個展でした。不確実性の権化とも呼べるような大壺を生み出した事によって、いよいよ作り手の意識が希釈されます。そこに人の意思が宿る余地は一切無く、これは先ほどの日常から外れる感覚に加えて、道具としてのうつわだったものが美術の文脈で語られ違う道へと誘われた“外れ”の表現とも言えます。“外れ”という言葉をキーワードに整理すると

・編集から陶芸への“外れ”と、その歩みが生み出す綻びなどを味とした形の“外れ”。
・土に強く身を任せるからこそ起こる、道具の意識からの“外れ”
・大壺を生み出すことによってこれまでとは違った表現、美術の世界へと誘われたことによる“外れ”

 このいくつもの”外れ”が様々な方向から重なり合う状態こそがうつわに深い魅力と共感をもたらしています。そしてこのような多方向からの要素の重なりこそがこれからの生活のうつわの魅力の理由となり得るとも考えています。タイトルに掲げるにあたり“外れ”だけでは言葉のもつネガティブなイメージが先行すると思い、道具としてのうつわを“日常”と表現された尾形さんの言葉をお借りして“日常の外れ”としました。

 うつわを手に取り、まずイメージするのは道具としてのうつわとの接し方です。ただ心から惹かれる物には何かしらの理由と魅力があるはず。たとえそれが手に取る個人の思いであってもその人にとって良い物と思える理由に十分なりえると考えます。
 いくつもの“外れ”という魅力を重ねてこられた尾形アツシさんのうつわを手に取って頂くとき、粉引や焼締の質感の向こう側、刷毛目の勢いの源を想像しながら、ご覧いただければ嬉しく思います。

 

写真はまだうっすらと雪の残る、寒い時期に工房にお伺いした時の物です。道路から少し入り込んだ山間に工房があり、そこでは土も陶器も同じ境界で存在しているかのような気分になります。

 

尾形アツシ個展Quwan

 

尾形アツシ工房

 

-尾形アツシ個展「日常の外れ」-
2018年5月19日~27日
12:00~18:00
会期中定休日なし
作家在廊日:5月20日

 

≪尾形アツシ氏略歴≫
1960年 東京都生まれ
1996年 愛知県立窯業高等技術専門学校卒業
1998年 愛知県瀬戸市に工房を構え独立
2007年 奈良県宇陀市の山里に薪窯のできる地を求めて移住
2009年 倒炎式薪窯を築窯

 

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